「グレイスパット」のコストの課題を解決するためのフィルム「POLYGRACE NEO」は完成。残すは、フィルム+段ボールの溶着加工の自動化です。今回は、自動機械の開発ストーリーをお届けします。
自動機械の開発は、それを担ってくれる機械屋さん探しから始まりました。包装機械の展示会に出ているような機械メーカーは、大手過ぎて当社のような中小企業の案件には応じてくれません。インパルスシール機械の某大手メーカーも話は聞いてくれましたが、社の方針でオーダーメイドには対応してくれませんでした。当社が求めている少数精鋭でオーダーメイド案件に対応してくれるような機械屋さんはWEBで探してもまずヒットしません。でも、どこかに絶対そういう機械屋さんがいるはずです。問題はどうやって出会うかです。その方法論が見つからず、中小零細工場がひしめき合う大田区の町工場でもしらみつぶしに歩いてみようかしら、と悶々と思い悩む日々を送りました。
そんなある日、私の大学時代の友人の誘いで異業種交流会に参加しました。自分の知見や人脈を広げるのに良いかなと思い、当該案件とは関係なく参加したその場で私は運命の出会いを果たしたのです。それは某大手重工メーカー出身でフリーのエンジニアという肩書の方でした。私はまさに目がハート。すぐにアポイントを取り付けて「グレイスパット」を製造する自動機械メーカーを探している旨を相談しました。答えは「多分できると思いますよ」と。オーッ、来たぁ!! その後話はトントン拍子に進み、自動機械の設計・製造を引き受けてくれることになったのです。
自動機械の要件は、①フィルムを原反(巻物状)でかけられること、②段ボールパットの給紙からフィルムとのシール、完成品の排出まで自動で行われること、③フィルムと段ボールパットを熱のみでシールすること、④生産能力が1分間に10枚以上であること、でした。機械の発注から約1年後に設計通りに大方が組みあがってきました。
そこで2つの課題が私たちを苦しめたのです。一つ目は、段ボールとフィルムの溶着強度でした。「グレイスパット」が完成したら是非採用したいと言ってくださるお客様が設定された溶着強度は相当なものでした。実際にその力をかけると段ボールの方が折れ曲がってしまうような強度でしたが何とかクリアすることができました。
二つ目は、材料の精度ムラによるエラー発生でした。段ボールとフィルムは、その厚みは一定ではなくどうしてもばらつきがあります。また、段ボールには湿度に起因する“反り”や、フィルムには“蛇行”という悪癖が起きることがあります。材料にムラがあると、パットを自動給紙できなかったり、フィルムがラインから外れてしまい、フィルムが斜めに貼られてしまったり、段ボールが切れてしまったり、というエラーが発生したのです。このトラブルシューティングにはかなりの時間と労力を費やしました。材料も安定していて機械も調子が良い時には何の問題もないのですが、ご機嫌斜めの日には1日に何度も止まってしまい、まともにモノづくりができない日がありました。当初は、お客様に注文を頂きながらも機械が思うように動いてくれず、夏のお盆休み返上で機械にへばりいついた暑い日も今では良い思い出ですが…。そう、開発とは産みの苦しみが必ず伴うものなのです。
かくして、グレイスパットを製造する自動機械のマザー機(初号機)が完成したのです。しかし、このマザー機を生産設備として使うにはこの2つ目の問題がどうしても解決できず、その後2号機の開発に着手することになりました。次回は、この2号機の開発ストーリーをお届けします。