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【ポリウレタン③】 加水分解・黄変 とは?

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【ポリウレタン③】 加水分解・黄変 とは?

こんにちは!営業の渡部です。
2回にわたり熱可塑性ポリウレタン(以下ポリウレタン)をご紹介してきましたが、
最終回の今回は、ポリウレタンのデメリット「加水分解」「黄変」をテーマにお送りします。

― ポリウレタンシリーズ 全3回 ――――――――――――――――――――――――――
★ポリウレタン① 熱可塑性ポリウレタンとは?
★ポリウレタン② エステル系とエーテル系とは? 
★ポリウレタン③ 加水分解・黄変 とは?
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ポリウレタンというと「水に弱い」「黄色くなってしまう」というイメージを持たれることが多くあります。
弊社でも「耐水目的で使いたいので、水に強いものが欲しい」とか、
「野外で使用するので、黄色くならないものをさがしている」というようなお問い合わせを多く頂きます。

ポリウレタン製品はフィルムに限らずこのような特徴がありますが、なぜこのような反応が起きてしまうのでしょうか。

まずポリウレタンは、分子構造的に分子鎖の凝集力が弱いという特性があります。
凝集力が弱いということは、外部から影響(光や酸素等)によって、分子が解離しやすくなります。
また極性基の熱解離温度も低いため、熱が加わることで熱劣化をおこしやすい、という特性もあります。

こういった特性により引き起こされるポリウレタンの代表的な反応が、
今回のテーマでもある「加水分解」「黄変」です。

まずは加水分解についてです。
加水分解とは、水と反応して「酸とアルコール」に分解されることをいいます。

ポリウレタンは、エステル系とエーテル系の2種類に分けられることが多いですが、
一般的に加水分解を引き起こしやすいといわれるのはエステル系です。
同じポリウレタンなのになぜこのような違いがあるのでしょうか?

それは「結合」に理由があります。

エステル系は、構造内にエステル結合(-COO-)が含まれます。
エステル結合(-COO-)は水(H₂O)に触れることで、結合が切れてしまい、酸(-COOH)とアルコール(-OH)に分解されます。
この現象を加水分解と呼んでいます。

【化学式】-COO-(エステル結合)+H₂O(水)→ -COOH(酸)+-OH(アルコール)

エーテル結合(-O-)はエステル結合に比べて安定している結合です。
このため、水に触れても影響は受けにくく、加水分解を引き起こしにくい構造となっています。


つづいて、黄変についてです。
黄変とは、文字の通り、黄色く変化することですが、
ポリウレタンは、光(紫外線)、空気、化学薬品などの影響により、黄色に変色しやすいという特徴をもっています。
黄変の要因は様々ですが、よくいわれるのは光(紫外線)によるものです。

ウレタンは一般的なエステル系の例として、MDI(ジフェニルメタンイソシアネート)PEP(ポリエステルポリオール)という2つの主原料で構成されています。
この2つのうちMDIは、紫外線に当たることで酸化反応を起こし、キノンイミド構造を生成するため、黄変します。

紫外線で黄変するのなら、可視光でも黄変するのでは?と思われる方も多いのではないでしょうか。
実は可視光は紫外線に比べて黄変しにくく、黄変の原因としていわれる光は、紫外線を指すことがほとんどです。

これは光の持つ「結合解離エネルギー」の大きさに理由があります。
光による黄変は、光の持つ結合解離エネルギーによってウレタン内の結合を切断されることで引き起こります。
紫外線と可視光の結合解離エネルギーを比べると、可視光の方は非常に小さく、結合を切断するほどのエネルギーは持っていません。
このため、ポリウレタンの黄変の原因となる光は紫外線を指します。
(可視光では全く黄変しない、というわけではないのでご注意ください、、、)


用途や目的によって、加水分解や黄変のしにくさの重要度は変わってくるかと思います。
武田産業では、用途や目的によって使い分けが出来るように3種類のポリウレタンフィルムをご用意しております。

タフグレイス (エステル系)
⇒引張強度、引裂性の優れたグレードです。黄変、加水分解には強くないので、高温多湿などの条件下で使用する場合などは要注意です。
*規格品あり。小ロット対応可能(200m/本~)

エターナルグレイス (エステル系無黄変タイプ)
⇒新発売の無黄変タイプです。 比較的耐水性もございます。
*規格品あり。小ロット対応可能(200m/本~)

ミラーグレイス(エーテル系)
⇒加水分解しにくいグレードです。黄変には強くないので要注意です。(受注生産品)

エステル系が2種類あり、1つは通常品、もう1つは無黄変タイプとなります。
無黄変タイプは名前の通り、黄変しにくいグレードになりますが、通常品とはどれくらいの差があるのでしょうか?

 黄変度比較グラフ(TG88-I EG90).png

グラフにしてみると、一目瞭然です!
野外や日光の当たる場所でのご使用される用途の場合は、ぜひエターナルグレイスをご検討ください。
物性データや製品仕様については弊社ホームページに掲載しておりますので、ぜひご覧いただけますと幸いです。

カットサンプル(A4サイズ)をご用意しておりますので、ご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。

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