フィルムで内容物を固定するフィルム緩衝材「グレイスパット」。この開発ストーリーとして、前回はポリウレタンフィルム「タフグレイス」の誕生秘話をお伝えしました。
- グレイスパット開発秘話~その1~
- グレイスパット開発秘話~その2~
- グレイスパット開発秘話~その3~
- グレイスパット開発秘話~その4~
- グレイスパット開発秘話~その5~
- グレイスパット開発秘話~その6~
今回はその第2弾として、できあがったポリウレタンフィルムをフィルム緩衝材の形にするために、段ボールにどのように貼りつけたかをお話しします。
フィルム緩衝材「グレイスパット」は2種類あります。
1枚のフィルムで固定する「GRACEPAT MONO」
いずれも、フィルムの四辺、もしくは両サイドを段ボールに貼らなけなければいけません。特に、輸送中の緩衝力に優れた「GRACE PAT DUO」タイプでは、内容物として昔のブラウン管テレビや大型コピー機なども想定していたので、10kg以上の重量物を宙吊りにしても耐えられるように強くフィルムと段ボールがくっついていなければいけません。異素材をくっつける手段として選択肢にまず上がるのが接着剤ですが、環境対応を考えると有機溶剤はまず使いたくありません。
また、使い終わって緩衝材を捨てる時に、段ボールとポリウレタンフィルムを分別回収できるように、フィルムが剥がしやすいこともポイントです。強力にくっついていて、なおかつ剥がそうと思えば簡単に剥がれ、 有機系接着剤を使わずに実現する...。さて、無機系の接着剤をしらみつぶしにテストするかと、またまた長い道のりを歩み始めた矢先に、意外な発見からその解決策が生まれたのです。
それは"ヒートシール"でした。ヒートシールとは、熱でその素材を溶かして相手素材とくっつける方法です。ポリエチレンは120~130℃位で溶けて、冷やすとまた固まる性質をもっています。スーパーやコンビニのレジ袋が分かりやすい例で、筒状のポリエチレンフィルムを輪切りにカットして、その部分に熱をかけてフィルムを溶かし冷やすことでシールされて袋になるのです。
そもそも我々のような、空冷上吹きインフレーション装置にてポリエチレンフィルムを製造しているメーカーにとって、ヒートシールはとても身近で一般的なシール方法なのです。しかし、熱相溶性のあるプラスチック同士をくっつける場合がほとんどで、プラスチックと紙という異素材を熱でくっつけるという方法は、当時我々は見たことも聞いたこともありませんでした。
ただ、あったのです! 何がって、近くに、社内の片隅にヒートシール機械が。当時の開発担当の営業マン、前回もポリウレタンフィルムの開発ストーリーで登場している、何度パンチをくらっても、歯を食いしばって起き上がる、あしたのジョーをこよなく愛する"立つんだ哲三"さんです。
どうやってポリウレタンフィルムと段ボールをくっつけようかと頭を悩ましていた"立つんだ哲三"さんの目に、ヒートシール機械が入ってしまったのです。「うん、これで試してみよう。よいしょ、えいっやー!」 ジーーー、パシャッッ(ヒートシールの音)。そして、シールバーから取り出すと、ポリウレタンフィルムと段ボールは綺麗にシールされていたのです!
そう、思いがけないアイデアの元をたどると、何も高尚な議論の末に生まれたものではなく、「たまたま近くにあったから」とか「えいっやー!」の精神だったりするのですね。
次回は、このヒートシールの発見から、製品化までどのようにこぎつけたのか、ストーリーの続きをお伝えします。
乞うご期待!
グレイスパット(GRACE PAT)