
はじめに
弊社では遮光フィルムをメインに様々な機能性フィルムを販売していますが、遮光フィルムに関しては製造、販売を開始してから半世紀以上の歴史があり、最近では食品包材への展開を行っています。
そこで、第一回目は食品包装フィルムの遮光をテーマとして書いていきたいと思います。
光とは
光という言葉を辞書で調べると、デジタル大辞泉では「 目に明るさを感じさせるもの。太陽・星・電球などの発光体から出る光線。主に可視光線をさすが、普通は赤外線から紫外線までの電磁波をいい….」とあります。
一般的に光という言葉を使う時には「 目に明るさを感じさせるもの。太陽・星・電球などの発光体から出る光線」という意味で使われることが多いと思いますが、科学的には人間の眼で見ることができない紫外線、赤外線も含んだ電磁波のことを指します。
可視光線よりも短波長側( 400nm)の光を紫外線(ultra violet)、長波長側(780nm )の光を赤外線(infra red)と呼び、紫外線に関しては特定の波長域で区切り、UVA(320~400nm)、UVB(280~320nm)、UVC(200~280nm)、真空紫外線(10~200nm)に分けられています。
電磁波は波長が短いほどエネルギーが大きく、紫外線は皮膚の老化促進や色素の退色劣化などを引き起こします。
食品の光劣化
食品の劣化には温湿度、酸素、振動など食品を保存する様々な外部要因によって大きな影響を受けることが知られていますが、光も様々な変化を引き起こす重大な要因です。
食品の光劣化を促すと言われているのは紫外線から可視光線の波長の光であり、赤外線はエネルギーが低いため食品の劣化には影響しないと考えられています。
光劣化の原因となる光源には太陽光と室内光があり、食品劣化を促進する太陽光の波長は地上では300~400nmの紫外線と400~700nmの可視光線です。室内光の波長は可視光線がほとんどですが、400nm以下の紫外線もわずかに含まれているため太陽光、室内光ともに広い範囲の波長に対策する必要があります。
例えば、緑色の色素であるクロロフィルは紫外線だけでなく430nmと660nm付近の波長の可視光線にも反応し、退色が起きま 。とりわけボイル加工されたブロッコリーや豆類の退色が問題となっており調査・研究が行われています。
クロロフィルは光によって分解されると退色を起こすだけでなく、分解物が食品成分の酸化を促進させる光増感作用があります。
スナック菓子類などの油を使用した製品は、酸素による油の酸化が食品劣化の大きな要因ですが光も油の酸化の原因の1つであり、遮光が必要な食品です。特に食品成分中にクロロフィルが含まれている場合(野菜チップスなど)は通常よりも酸化が著しく増大するため注意が必要です。
包装による遮光
包装によく使われる光遮断材料として、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、乳白フィルム、黒色フィルムなどがあります。
アルミ箔と黒色フィルムは食品の劣化を促進する範囲の光を完全に遮断しますが、黒色フィルムは食品包装に使用するには意匠性が悪く、アルミ箔は金属探知機を使用することができなくなるなどデメリットがあります。
アルミ蒸着フィルムと乳白フィルムは光を完全に遮断することはできません。
紫外線のみを遮断する目的であれば乳白フィルムでも十分な性能ですが、可視光線の遮断率は十分とは言えません。
クロロフィルのように可視光線域の波長にも反応する成分が含まれている食品の劣化を防ぐには紫外線から可視光線を遮断する必要があります。
<文献>
1)平田孝:光劣化防止と包装材料、食品の光劣化防止技術、津志田藤二郎・寺尾純二・平t孝(編著):㈱サイエンスフォーラム.2001.pp.139-148
2)石谷孝佑ほか:クロロフィルおよびクロロフィル誘導体の光分解について,日食工誌,24,448 (1977).
3)Kotani M. et al:Chlorophyll Degradation in Boiled Broccoli Florets during in the light, Food Sci.Technol. Res., 5, 35 (1999).
4)山内直樹:2.4マメ類,冷凍,74,610 (1990)